従業員を採用した際の社会保険料・労働保険料の会社負担額はどの程度か、詳しく解説します | エンライ社会保険労務士事務所
従業員を採用した際の社会保険料・労働保険料の会社負担額はどの程度か、詳しく解説します

従業員を採用した際の社会保険料・労働保険料の会社負担額はどの程度か、詳しく解説します

2023年9月12日 15:00お役立ち情報

従業員の採用に関するコストについて

当然ながら従業員を採用すると会社にはさまざまなコストが発生します。

その従業員に払う給料は当然のこと、PCの購入や名刺の印刷などもかかってくるでしょう。もしも従業員がフルタイムで勤務をしているような場合には社会保険料などのコストもかかってきます。

実はこの会社負担の社会保険料は意外と大きな金額がかかっているのはご存知でしたでしょうか。また、社会保険料ほど大きな金額ではないものの雇用保険や労災保険に関する労働保険料もかかっています。

今回は会社が負担しなければならない社会保険料や労働保険料について詳しく解説していきたいと思います。

会社の負担する社会保険料について

社会保険料の構造

社会保険料は一般に健康保険料と厚生年金そして介護保険料の総称です。これらの社会保険料は従業員自身が負担するものですが、実は会社も従業員と同額を負担することとなります。

また従業員が厚生年金に加入している事業所は、子ども子育て拠出金という費用も負担することとなっており、広義での社会保険料にはこの子ども子育て拠出金を含みます。

健康保険料と介護保険料

健康保険料は毎年負担割合が改定され、さらに都道府県ごとに料率が異なっています。

2022年においては東京都が9.81%、最高が佐賀県で給与(標準報酬月額)の11%、最低が新潟県で9.51%となっています。この割合で計算される健康保険料を従業員と会社で折半する形となります。

また、40歳以上の従業員は介護保険料も負担することとなりますが、この介護保険料も毎年負担割合が改定され、こちらは全国一律の割合です。

2022年においては給与の1.64%で、この割合で計算される介護保険料を従業員と会社で折半します。

厚生年金保険料

厚生年金保険料は毎年負担割合が改定され、全国一律の割合となります。

2022年の厚生年金保険料割合はなんと18.3%にもなります。

給与の18.3%をかけて計算された金額を従業員と会社で折半することとなります。

子ども子育て拠出金

子ども子育て拠出金も厚生年金と同様に毎年負担割合が改定され、全国一律の割合となります。

2022年の子ども子育て拠出金は0.36%となっております。

この拠出金は会社だけが負担するという点で他の社会保険料とは異なっています。

上限額について

健康保険、介護保険そして厚生年金保険は給与に対する負担割合が大きいのですが、上限額があります。

健康保険と介護保険については月額給与が約135万円を超えるとそれ以上負担額が増えることは無くなります。

厚生年金保険(と子ども子育て拠出金)については月額給与が約66万円を超えるとそれ以上負担額が増えることは無くなります。

健康保険と介護保険の基準になる135万円を超える方はそう多くはないと思いますが、厚生年金保険の基準になる66万円の水準になると超えてくるかたも出てくるのではないでしょうか。

会社の負担する労働保険料について

労働保険料の構造

労働保険料は一般に労災保険料と雇用保険料の総称です。また、労働保険料と併せて一般拠出金と言われる拠出金も負担することとなります。

これらのうち雇用保険料については従業員と会社が決められた割合で負担し、労災保険料と一般拠出金については会社だけが負担するコストとなります。

労災保険料

労災保険料は従業員が就業時間中に事故があった際の補償を会社の代わりに行うための保険となります。そのため労災保険料は全額を会社が負担します。

この保険料率は保険という特質上、会社の事業内容によって大きく変動します。

たとえばデスクワークの金融業などであれば給与等の0.25%ですが、一方で危険で事故が起きやすい鉱山などの石炭工業では8.8%にまで跳ね上がります。

雇用保険料

雇用保険料は従業員と会社がそれぞれを負担します。概ねその負担割合は従業員よりも会社の方がやや高くなっています。

この雇用保険料は長らく0.9%(従業員0.3%・会社0.6%)だったのですが、2020年に入ってからコロナウィルス対策の各種助成金を拡充した反動を受けて、2022年より大幅に負担割合を引き上げています。

2022年10月以降は1.35%(従業員0.5%・会社0.85%)にまで引き上げられました。

なお一般の業種と比べて繁閑などによる雇用の流動性の大きい農林水産業は1.55%、建設業は1.65%と通常の業種よりも負担割合が高くなっています。

一般拠出金

一般拠出金は、アスベスト対策のために広く事業主から徴収している負担金となります。

アスベストも大分に片付いているためか、負担割合は0.005%と非常に小さくなっています。

会社の負担するコストまとめ

さて、従業員に対する社会保険料と労働保険料の負担額をまとめたいと思います。

たとえば毎月の給与が額面30万円の東京のIT会社勤務の30歳の従業員に対する会社の負担割合は以下の通りとなります。

300,000円 * 15.52% = 46,560円

合計:15.52%

  • 健康保険料:9.81% / 2 = 4.905%
  • 厚生年金保険:18.3% / 2 = 9.15%
  • 子ども子育て拠出金:0.36%
  • 労災保険料:0.25%
  • 雇用保険料:0.85%
  • 一般拠出金:0.005%

最後に

社会保険労務は非常に複雑な分野で、特に給与計算は知識のない方が行うにはハードルが高いです。ぜひ給与計算の依頼をご検討ください。